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2015年3月11日

Bloodborne -IGN First-

  IGNによる特集が終わって久しい今、新たな情報も加わりBloodborneの輪郭がだいぶはっきりと見えてきた。今回の記事は先週書き始めたものということもあって今最も盛り上がっている部分には触れていないが、2月中に公開された情報の中から世界観に関わる部分を汲み上げていこうと思う。

  ※ 今回もαテストのエリア外動画の内容に触れるのでそれでも構わないという人だけ読み進めてほしい。




◇血の医療

  SCE企画の挑戦デモンズにおけるBloodborneの紹介で新たなキーワードが出てきた。青ざめた血だ。これはヨセフカの診療所でキャラクタークリエイトを始める前に、血の医療者(山際氏は男をヨセフカではなくこう呼んでいた)とのやりとりで出てきた言葉。主人公はこの血が自分の病を治すと聞いてヤーナムまでやってきたのだろう。そしてこの診療所には治療のためではなく青ざめた血の情報を求めて訪ねたようだ。主人公の問いに血の医療者が答える。

  しかし血の医療者は主人公がよそ者であるのをいいことに全てを語らない。ヤーナムを訪れた主人公を正しく幸運であると評するも、ヤーナムの血の医療とその秘密が導いてくれると回りくどく説明しただけだ。そしてそのためにはヤーナムの血を受け入れろと。
  およそまともとは思えない取引だ。目的である青ざめた血が手に入る保証もないのに正体の分からない血を自分の体に入れる。この輸血がヤーナムの往来を許す通行証のようなものなのだろうが、それにしたって尋常な話ではない。
  しかしそれでも主人公はその誓約書にサインをした。患った病はそれほどまでに悲惨なものなのだろう。選択の余地はないようだ。

  血の医療が始まった。その血は主人公に象徴的な夢を見せ、しかし医療の後遺症により記憶は混濁し目的を忘れてしまうこととなる。




◇誓約書

  血の医療者がサインを求める誓約書はキャラクタークリエイトの場面となる。プレイヤーが思い浮かべる人物像をここに入力するのは、まるで我々が医療機関で初診の際に書く問診票だ。これはエリアに点在するメッセージや墓標で見られる他プレイヤーの死に様に使者というキャラクター性を持たせたのと同様、キャラクタークリエイトにも世界観的な設定を持たせたのだろう。いつかのインタビューで宮崎氏は「システムを世界観に溶かす」という表現を用いていた。これらはその表れのようだ。

  キャラクタークリエイトでは新たな要素がいくつかあった。ボイス年齢の選択や、眼鏡、体各部のスケール調整などがそうだ。途中まで作ったキャラデータを保存できるのも嬉しい追加要素。また従来の生まれや素性の選択は職業だったが、今作は「過去」を選択することになる。「村の生き残り」や「一族の末裔」などがあり、選んだ過去によって初期能力値が変わる。初期装備やアイテムにも違いがあるのかはまだ分からない。中には「生まれるべきではなかった」なんてものもあり、なかなか辛辣な言われようだが喜ぶ人も多そうだ。プレイヤーは祝福された過去が一つもない選択肢の中から選びキャラクターを作り上げていく。

  しかしこれだけではそれこそただの問診票だ。誓約書と言うからには「血の医療の後」にも続く何かがあるはず。術後に後遺症を発症しても貴院に罪を問わない、なんて無粋なものではないだろう。病み人が遠くから訪れ求めるほどの高度な医療技術を持つ教会に身を守る文言は必要ないはずだ。恐らくこの誓約書には医療教会に入信するという一文があるのではないだろうか。血の医療者は医療教会の人間であると考えるのが妥当で、教会は医療のほかに獣狩りも行なっている。当然獣を狩る狩人を欲しているはずだ。ヤーナムを訪れた患者に血を投与して強力な狩人を作り上げ、獣狩りをさせようとしているのではないか。主人公が教会に入り聖職者(狩人)になるのなら、キャラクタークリエイトでの選択が職業ではなく過去になったのも納得だ。

  思えばヤーナムの住人が罹っている獣の病と狩人が罹っている病は、獣を祖としながらも違う性質を持ったものなのかもしれない。医療教会が血の医療で感染させた狩人は明らかにヤーナムの住人と能力が違う。聖職者こそがもっとも恐ろしい獣になるという言い伝えはここから来ている可能性がある。そしてその恐ろしい獣の一端であるガスコインは狩人であり、また神父でもあるのだ。もしかしたら彼もこの誓約書を通してヤーナムの血を受け入れ医療教会に入ったのかもしれない。


主人公が目覚めた部屋の右隅に一瞬だけ椅子の上に置かれた紙が見える。これは血の医療者が残していった誓約書の写しなのかもしれない。調べればその内容を確認できるだろうか。


  医療教会は獣狩りをする一方で血の医療によりヤーナムを訪れた人々を獣の病に感染させている。現在公開されている情報だけでこの矛盾を埋めることはできるだろうか。考えられるのはヤーナムにはびこる獣を倒すにはより強い狩人を充てなければならず、その狩人を作るために獣の血が必要なのではないかということ。しかしガスコインがそうであるように屈強な狩人もいずれ獣となり人々を襲う。獣狩りを続けて大量の血を溜めこんだためか、獣化したガスコインはそこらの獣よりも遥かに強く、獣を狩るという教会の目的に反してヤーナムの驚異となってしまっている。
  だが、もしも医療教会の獣狩りの目的が獣を根絶させることではなく、獣の病に罹患した者たちを戦わせてより強い獣を作り上げることだとしたらどうだろうか。教会の欲しているものが強い狩人ではなく強く恐ろしい獣だとすれば、その行為は矛盾ではなくなるのかもしれない。

  強い獣が行き着く先には何があるのだろう。ダークソウルの主人公が火を継がず、人間が神々に取って代わったように、Bloodborneは獣が人間に取って代わる物語なのだろうか。主人公はヤーナムの秘密を探っていくなかで病の根源を断ち人間の世界を維持するのか、あるいは病に飲み込まれ獣がはびこる世界に変えるのか。どちらが正しいのかは分からないが、主人公が人である以上人間の世界を維持するのがより望ましいはずだ。しかし、もしも誓約書に記した主人公の過去が「生まれるべきではなかった」であったなら、それは主人公が救った人間の世界は救うべきではなかったと否定することになるのだろうか。




◇啓蒙

  青ざめた血のほかにもう一つ気になるキーワードがあった。啓蒙だ。これはIGNの動画にあった「Insight」にあたるステータスでアイコンはそれらしく目の形をしている。しかしInsightが洞察力であるのに対し啓蒙となるとその意味は変わってくる。

  啓蒙を手元の辞書で引くと「情報の寡少な一般人に必要な知識を与え、知的水準を高めること」とある。無知な人に正しい知識を与えて導くという意味だ。「啓」は開く、「蒙」は覆う・暗い、転じて知識がなく道理が分からないとなる。訓読で「蒙きを啓く(暗きを開く)」となり、多くは「蒙を啓く」「啓蒙する・される」という使い方をされる。

  歴史における啓蒙思想は17世紀のイギリスで興った後、18世紀のフランスで隆盛を極め後世に多大な影響を与えた。これは大雑把に言えば、人間は理性によって世界を理解することができるはずなので、古い文化や宗教的観念に囚われずに精神的自立をすべきだというもの。この思想は科学と非常に相性がよく、後の産業革命の礎を築き、フランスにおいては絶対王政を打倒する市民革命へと繋がった。Bloodborneの世界観は産業革命後のヴィクトリア朝をイメージしているので、この辺りの歴史を踏まえればより面白くなるかもしれない。

  やや話が逸れたがこの啓蒙がキャラクターのステータスに存在する。ゲームを進める上で主人公が他者に対して知識を与えるというのはイメージしにくいので、このステータスは啓蒙「された」度合いを数値化したものだろう。しかしこれがゲームにどのように作用するのかというのもまたイメージしづらいのが正直なところだ。
  また、啓蒙は後の動画でHUDに表示されることが分かった。


右上の血の意志の下に啓蒙が追加された。


  HUDに表示されるということは重要な数値であり、かつプレイ中に割と高い頻度で上下するということが窺える。事実、この扉を開いてボスと対峙した瞬間に啓蒙は1つ加算された。
  思い出されるのはダークソウルの人間性だ。これも主人公がその身に溜め込んだ人間性の数がHUDに表示されていた。またエリアを移動したり、未クリアのエリアで人型の敵を何度も倒したりするといつの間にか人間性を取得することがある。啓蒙が1つ増えたのはそういう何気ない行動で増えただけという可能性もある。そして人間性の主な用途は亡者からの復活や篝火の強化だった。Bloodborneにおいて亡者にあたるものは獣であると予想されているがその情報はまだない。

  歴史に鑑みれば啓蒙は宗教の否定と言ってもいいかもしれない。ヤーナムには軽々に探るべきではない秘密があり、それは医療教会が抱えている。この数値が高くなるほどに医療教会の支配から離れ、啓蒙された主人公は独自に真実に近づくということだろうか。対して啓蒙が低いほどに主人公は無知蒙昧となり獣に近づくのではないだろうか。




◇ストーリートレーラー

  非常に雰囲気があり見る人の興味を惹くストーリートレーラーが公開された。IGN First用に編集されたものなので日本語字幕がないのが残念だが、非公式の翻訳はこちらのサイトで確認することができるので参考にしてほしい。トレーラーの中から気になるところの一部を見ていく。


初登場となる祈る女性。しかし下の画像はどこかおかしい。


  上の画像ではうずくまるように祈っていて特に不自然なところは感じられない。だが下の画像はどうだろうか。膝立ちをして上半身を折り曲げているようだが、その体のバランスはどこかがおかしい。背中のラインを見るに腰が異様に高い位置にないだろうか。胴が異常に伸び大きく折れ曲がっている、あるいは胴ではなく膝から上の大腿骨、または首が伸びているようにも見える。

  獣の病は人の体の一部を異様に発達させる。聖職者の獣であれば左腕が、血に渇いた獣であれば胴が、ヘムウィックの墓女は脚がそれぞれ人間のそれよりもはるかに長い。


ヘムウィックの墓女。いずれも腰の位置が異様に高い。


  この祈る女性も獣の病に罹っているのだろうか。この直後のシーンでは女性の上半身の影が突然のけぞり、血に渇いた獣のシーンに繋がる。ミスリード的な演出かもしれないが気になるところだ。

  しかし獣の病の特徴が体に表れるならなぜ主人公は普通の人間と変わらないのだろう。ガスコインは体の一部ではなく全体がバランス良く大きくなっている。それが彼の病の特徴なのかもしれない。対して主人公はその外見に特徴が表れていない。それは病に罹患したばかりだからと考えるのが妥当だが、もしかしたら主人公の持つ病の特徴は体に表れるのではなくリゲインという能力そのものなのかもしれない。

  トレーラーの最後に気になるセリフがあった。「そして狩りが再び始まる」。GCトレーラーでは「獣狩りの夜が始まる」というセリフだったが、今回のセリフはそれが再開するというもの。ヤーナムで続く獣狩りがとあるイベントにより中断し、いつかそれがまた始まるのだろうか。しかし状況が一変する可能性もありそうだ。今作のメッセージとなる手記には「獣狩りの時間だ」と「人狩りの時間だ」という対照的な文言がある。いずれヤーナムの狩人たちは劣勢になり、獣に狩られる側に回る、あるいは狩人こそが獣になり人を狩るようになるのかもしれない。


その印象的なセリフとともに、主人公の肩に赤い靄が現れる。

海外版のパッケージに使われているイラスト。それはまるで獣の手だ。




◇黒獣

  ビッグサプライズと謳われたIGN Firstの最後の新情報は未公開のボス「黒獣」だ。情報を求めるファンの心を鷲掴みにしたその謳い文句が適切だったかは置いといて、まずはその姿を見ていこう。

凄まじい威圧感だ。その巨体も顔も佇まいもすべてが怖い。最高のデザインだ。

指先にまで意識が届いているように見える動きは明らかに動物以上の知性を感じさせる。不気味な動きだ。


  四足歩行で移動するその姿はまさに獣だが、その身に肉はなく骨と毛だけとなっている。しかしその頭蓋や手足に見られるように骨の作りは人そのもの。また異様に長い首からは獣の病の症状が窺える。聖職者の獣もその身が痩せこけ、あばら骨が浮かび上がっていた。ほぼ骨だけとなった黒獣の姿は病の罹患者が行き着く先なのだろうか。

  そして黒獣は電気を纏っている。このボスを倒せば雷属性の武器を作る素材が手に入りそうだ。またボスエリアに続く扉のデザインから黒獣が聖杯ダンジョンに生息していることが分かる。
  獣の病に罹った者は血を求めるという理解だったが、骨だけとなった黒獣に血を求める理由などあるのだろうか。繰り返しになるが獣の病には種類がありそうだ。ならばその種ごとに求めるものも違うのかもしれない。特に古い、老いた獣と言われる黒獣には血そのものよりも血の意志が相応しいように思える。

  海外の公式サイトでは黒獣は「Darkbeast」となっている。しかしプレイ動画では「Darkbeast Paarl」だ。これはどういうことなのか。Paarlは黒獣の名前と思われるが、なぜ公式サイトにはその名前が載っていないのだろう。これは黒獣は複数いてそのうちの一体がPaarlということだろうか。気にかかるのはPSXのQ&Aで宮崎氏がプレイヤーがエリアのボスとなるシチュエーションを取り入れる可能性があると答えていたこと。であるならばこのPaarlが他プレイヤーのIDもしくはキャラクター名という可能性が出てくる。ランダム生成である聖杯ダンジョンのボスをプレイヤーが演じるのだ。もしそうであるならば今回の情報は確かにIGN Firstの最後を飾るに相応しいビッグサプライズなのかもしれない。




◇最後に

  今回の記事は都合により前後半に分けた。内容を端的にまとめられなかったからというのが正直なところなのだが、途中まで書いた記事をある切り口から見て振り返ったとき上手いこと分けられるかもしれないという思いがあった。現状ではどう着地するかは分からないが、前半に比べ後半は少し踏み込んだ内容になりそうだ。
  本当は完成発表会の前に書き上げたかったが、投稿するのは早くても明後日の夜あたりだろうか。発表会を終えて盛り上がるなか、もしもこのブログのことを思い出してくれたら覗いてみてほしい。